• ボイスドラマ「ともだち」
    Feb 11 2025
    『ともだち』は、友情と信念が交差するサスペンスドラマです。高校時代、互いを支え合い、競い合いながら青春を駆け抜けた二人の少女——エミリとミア。しかし、異なる道を進んだ彼女たちは、運命のいたずらによって、敵対する立場へと追い込まれていきます。環境保護という大義のもとに立ち上がったミア、国際社会の秩序を守るために戦うエミリ。彼女たちの友情は、理想と現実の狭間でどんな選択をするのか。本作では、環境問題や国際情勢のリアルな側面にも触れつつ、「ともだち」とは何か、「信念を貫く」ということが何を意味するのかを問いかけています。友情は、どこまで続くのか?もし、親友と対立する日が来たら——あなたなら、どうしますか?(CV:桑木栄美里)※エイミー(AMI)はフランス語で「ともだち」、ピリカはアイヌ語で「美しい、可愛い娘」【ストーリー】■SE/陸上のトラックを走ってくる音〜観客の声援「エミリ、お願い!」「ミア、まかせて!」高校最後の400mリレー走。アンカーの私は、第3走者のミアからバトンを受け取る。スタートで出遅れたが、ミアが巻き返して2位で私につないだバトン。「エミリ、がんばって!」■SE/大歓声「やったぁ!」勝った・・・卒業前の大会を優勝で飾れたのはミアのおかげ。いや、私とミアの友情だ。ミアと私は、陸上部の長距離ランナー。トラックの上で3年間、競い合ってきた。私たちは、顔も身長もよく似ている。まるで、鏡に写した分身のように。負けず嫌いの性格も、好きなスイーツも同じ。学校でも私生活でも、いつも一緒に過ごす、大親友だった。私の名前は、「美」が「栄える」と書いて、エミリ。ミアの名前は、「美」と「愛らしさ」を併せ持つ。名前にも通じるところがあるのが嬉しい。だが、卒業後は別の道を歩く。ミアは北海道の大学へ行き、獣医になる勉強を。私は沖縄の大学へ行って、国際社会を動かすスペシャリストを目指す。2人とも大好きな高山を離れるのは辛かったけど、お互いの志を、お互いにリスペクトしていた。「エミリ、はなればなれになってもずうっと友だちだよ!」「あたりまえじゃない、ミア。たとえ会わなくたって一生友だちだから!」やがて季節が変わると、私たちはそれぞれの大学へ旅立っていった。■SE/飛行機の離陸音私の前を5回目の冬が通り過ぎていく。大学を卒業するまで、私は一度も高山へ帰らなかった。それでも、ミアとの関係は変わらない。毎週のようにLINEで近況を報告し合った。だから彼女の活躍も手に取るように理解できる。卒業後、私が就職した場所は、アメリカ。大きな声では言えないが、在学中にスカウトされて、CIAに入職したのだ。とはいえ、CIA(米国中央情報局)の職員になるのは簡単ではない。まず、四年制大学を卒業すること。私が学んだ大学は、5年一貫制の博士課程を持つ。クリア。修士号の取得を検討すること。同じくクリア。母国語以外に複数の外国語をマスターすること。私は高校時代から外国人観光客向けに4か国語で通訳をしていた。クリア。CIAの業務に関連した経験を積むこと。私ではなくCIAの方からオファーされたのだから、クリア。最後の難関は、アメリカの市民権を持っていること。これも、CIAから現地採用職員という形にしてもらって、クリア。ということで、私はいまアメリカのラングレーに住んでいる。仕事は、主に環境テロ対策。ミッションは機密だが、私が大学のときに作ったAIプログラムを動かしている。私のAIプログラムが探り当てた、もっとも過激な環境テロリスト集団。彼らは、街の環境を守る、という名目で実際には破壊活動をおこなう。すでに何人もの犠牲者も出ている。リーダーはわかっているが、奴は決して表舞台には出てこない。代わりに最前線で活動するテロリストは「ピリカ」。最近よく耳にする名前だ。国籍も性別も不明。この「ピリカ」が、いま最も重要なターゲットになっている。今回わかった、彼らの目標は、なんと、日本。ということで、ミッションリーダーは私になった。私は日本人であることを悟られないように、コードネームを与えられる。「...
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    16 mins
  • ボイスドラマ「最強のワタシ」
    Feb 11 2025
    『最強のワタシ』は、雪深い高山市を舞台に、ある少女の生き様を描いたアクション・サスペンスです。主人公・エミリは、幼い頃の事故で母を亡くし、父は半身不随に。そんな過去を抱えながらも、彼女はひとりで鍛錬を重ね、やがて“犯罪狩り”を始めることになります。デジタル迷彩服に身を包み、最新技術を駆使して夜の街を駆ける彼女の目的はただひとつ──10年前の事故の真相を暴き、仇を討つこと。しかし、そんな彼女の前に、ある男が現れます。新しい担任教師として現れたその男は、かつて彼女を襲った犯人なのか?果たしてエミリは復讐を遂げることができるのか?この物語は、復讐と家族愛、そして“最強”であることの意味を問いかける物語です。ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。そしてこの物語は、Podcast番組「Hit’s Me Up!」の公式サイトやSpotify、Amazon、Appleなどの各種プラットフォームでも音声で楽しめます。小説と音声、両方の世界で『最強のワタシ』を体験してみてください!(CV:桑木栄美里)【ストーリー】■シーン1(エミリ=8歳)/救急車の車内■SE/救急車の車内音〜サイレンの音「パパ!ママ!」「エミリ、よく聞いて。これからパパのこと、お願いね。頼んだわよ、エミリ」「ママは!?いやだー!ママ!いやー!いかないで!」■シーン2(エミリ=18歳)/学校の教室(お昼の休み時間)■SE/学校のチャイム〜教室のガヤ「ちょっと見て、あの子。また、隠れてお弁当食べてる」「きっとゲテモノなんじゃない」(クスクスと笑い声)クラスのみんなが小さな声で、私のことを話してる。だってしょうがないじゃん。私、ただでさえ陰キャなのに、料理のセンスがゼロ、というよりマイナスだから・・・お弁当箱に入っているのは、茹ですぎてブヨブヨになったパスタ。まわりでガチガチに固まっているけど、これはれっきとしたタマゴ。そう、カルボナーラなんだ、いやカルボナーラだった、というべきか。我ながらホントにまずいわ。パパ、こんな私の手料理、いつもよく食べてるなあ。まったく、尊敬するよ。ごちそうさま。私の自慢は、どんなにひどい料理でも食べ物を絶対に残さないこと。ママにいつも言われてたもん。さあてと。うちの学校ってスマホは禁止なんだけど、腕時計までは止められてないのよね。今日も残った休み時間で、X(旧Twitter)のハッシュタグを見る。どんなハッシュタグかって?ちっちっちっ。知ったらいま番組聴いているあなたにも危険が及ぶのよ。絶対に言えないけど、実はこのハッシュタグでリアルタイムの犯罪状況がわかるんだ。お、今夜41号で暴走族の集会がある?こんな真冬によくやるわ。よし、今夜の獲物はこいつらだな、決まり。■シーン3/深夜の高山市内(国道41号あたり)■SE/国道を走る暴走族高山市街の西側を南北に走る国道41号。そこへ爆音を響かせて暴走族がやってくる。情報によると構成メンバーは15人。前を走るバイク3台、背後のクルマ4台は情報通りだ。国道158号と交差する小糸坂のあたり。自動車ディーラーの影に私は身を隠す。フルフェイスの特殊なゴーグルとデジタル迷彩服。私の姿は奴らからは確認できないだろう。彼らはなんの疑いもなく、交差点に入ってくる。次の瞬間、タイヤが破裂する音とともに、バイクが次々と転倒していく。クルマはバーストでコントロールを失い、電柱に突っ込んだ。やった。直前にばらまいた撒菱(まきびし)が効いたな。私はゆっくりと深夜の交差点を歩いていく。撒菱を拾い集めながら、残った構成員たちをチタン製のトンファーで打ちのめしていく。え?トンファーって知らない?超頑丈な特殊警棒だよ。ほら、るろうに剣心で柏崎が使ってたやつ。わかんないか。私を見て最初は驚いたが、まだ元気なやつはすぐに襲いかかってきた。私は軽く身をかわして、トンファーで脛を思いっきり殴打する。あっという間にみんな倒れていき、立っている人影はいなくなった。まあ、生きているだけ感謝するんだな。転がったクルマたちの前に手際よく三角表示板を置いて、二次災害を防ぐ。倒れているリーダー格の男の...
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    14 mins
  • ボイスドラマ「10年目の成人式」
    Feb 10 2025
    成人式という人生の大切な節目を舞台に、「約束」と「時間」が織りなす切なくも温かなドラマを描きました。成人の日は、ただの通過点ではなく、人それぞれの想いが交錯する特別な一日です。大切な人と交わした約束、果たされなかった言葉、そして時間がもたらす変化——。そんな想いを込めて、この物語を紡ぎました。また、本作はボイスドラマ としても制作され、実際に音声で楽しむことができます。Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォーム、そして「Hit’s Me Up!」の公式サイト にて配信中です。声優の方々が演じる登場人物たちの息づかい、シーンごとに流れる音響効果が、物語の世界をより鮮やかに彩っています。ぜひ、文章だけでなく音でも この物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。それでは、どうぞ最後までお楽しみください(CV:桑木栄美里)【ストーリー】<『10年目の成人式』>[シーン1/成人式会場]「成人おめでとう!」「おめでとうございます!」「おめでとう!」華やかな振袖たちが、踊るように成人式の会場へ吸い込まれていく。私が身に纏うのは真紅の振袖。大きな花弁の椿が咲き、優雅に蝶が舞う吉祥紋様(きっしょうもんよう)だ。『聖なる花』である椿は『永遠の美』という意味を持つ。卵から幼虫、さなぎへ。そしてさなぎから羽化する蝶は不老不死の象徴。未来を祝福するような艶やかないでたちが、私の心を逆撫でした。寒空(さむぞら)のなか、私は鬼の形相で会場の入口に立っている。あれは1か月前。彼と一緒に、着物の衣装屋さんに行った。初めて着る振袖に、いや、七五三以来初めて着る着物に不安いっぱいの私。『ここから会場までどうやって行けばいいの?』とっさに彼が言った、『僕が送っていくよ』このひとことにどれほど安心したか。『僕のSUVなら車内も広いし、安全運転だから大丈夫さ』よくものうのうと、そんないい加減な言葉を口にできたものだ。成人式の日。着付けが終わっても、待てど暮らせど現れない彼。泣きそうになる私に、お店の人がタクシーを呼んでくれた。成人式の会場に着いてからも、私は30分以上待たされている。首長の挨拶も来賓の祝辞も、とっくに終わっているはずだ。あきらめかけて、会場へ入ろうかと思ったとき、黒いSUVが私の前で急ブレーキをかけた。■SE/急ブレーキ〜車のドアをあける音『ごめん!』慌てて車から降りてくる彼。鬼と化した私を見て、一瞬ひるんだが、『朝クルマが急に動かなくなって』『寒波で電気系統がやられたらしい』『ドイツ車って意外とそこ弱いんだ』と、言い訳以外のなにものでもない言葉を私に投げつけた。私は怒りを抑え、眉間に皺を寄せたまま微笑み、『もう、さよならしましょ』と、彼に告げた。彼の表情がゆがみ、泣きそうな顔になる。『ちょ、ちょっと待ってよ』『ホントなんだってば』『連絡くらいできるでしょ』『したよ!LINE送ったじゃないか』私は、自分のLINEの画面を彼に見せて、『どこに?』私のスマホを見て彼は焦る。『そんな!ちゃんと送ったのに』『クルマが壊れて動かない、タクシーで先に会場へ行ってくれ、って』『あなたに言われなくても来たけど』『すまない』『これが私とあなたの相性なのね、きっと』『そうじゃないんだ』『もうあなたの顔なんて見たくないから』『ホントに悪かった。謝罪を受け入れてほしい』『無理でしょ』『お願いだ』『こんな気持ちのときになに言われたって無駄』『じゃあ・・・待つよ』『どうぞご勝手に』『いつまで待てば許してくれる?』『そうね・・・』『10年後の今日、ここでもう一度謝ってくれたら許してあげる』『え・・・』彼は私の目をじっと見つめ、なにも言わなかった。そりゃそうよね。この言葉自体が、謝罪は不可能だって告げているわけだもの。成人式の会場でも、私と彼は離れて座り、一切言葉を交わさなかった。帰りも別々に帰っていく。衣装屋さんで着付けを解き、家に帰った私は泥のように眠った。[シーン2/月日は流れて】成人式から1年後。風の噂で、彼が結婚したと聞いた。当然、私にインビテーションが届くわけもなく、私は心の...
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    15 mins
  • ボイスドラマ「エール後編〜総理大臣は女子高生」
    Feb 10 2025
    前作『エール』の続編として、震災支援から始まった高校生たちの行動が、やがて日本の政治を動かしていく物語です。前作では、オンラインゲームでつながった仲間を助けるために、主人公たちが支援活動に奔走しました。その経験を経て、今作では、彼女たちが社会を変えようと奮闘する姿を描いています。「高校生が政治を変えるなんてありえない?」いいえ、決してそんなことはありません。デジタルネイティブ世代の彼女たちが、ネットやSNSを駆使して自分たちの未来を切り開いていく姿を、ぜひ最後まで見届けてください!また、本作はボイスドラマとしても制作され、番組「Hit’s Me Up!」の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなどの各種Podcastプラットフォームで配信されています。音声ならではの臨場感やキャラクターの感情のこもったセリフを、ぜひお楽しみください!それでは、**「女子高生が日本を動かす」**物語の始まりです。(CV:桑木栄美里)【ストーリー】[シーン1/Hits-FM番組オンエアスタジオ]■SE/「Hits Goodmorning Hida」のタイトルコール〜TM.BGM『Hits Goodmorning Hida!今日はゲストに、地元高山の女子高生をお招きしました。高山の高校生たちに呼びかけて被災地への支援を続けているエミリさんです!こんにちは、エミリさん』『あ、こんにちは』『エミリさんは元旦の夜から情報収集して支援の輪を広げていったんですよね?』『いえ、私でなくて生徒会長が中心で動いてくれたんですけど』『すごいですね。じゃあエミリさんはどうして支援をしようと思ったんですか?』『私のゲーム友だちが被災したんです』『そうなんですか・・・』(「それは大変でしたね」とか続けて〜F.O.)■Emily/番組FOにかぶせてモノローグ高山の高校生たちによる被災地支援の輪。その活動が話題となって、地元のFM放送局で紹介された。生徒会長と副会長が出演を辞退したために、私がインタビューに答えている。私だって、人前で話すのは苦手なのに。いやむしろ、私の方が生徒会長よりよっぽどコミュ障だって。まさか、このゲスト出演が、私の人生を変えることになるとは、夢にも思わなかった。[シーン2/高山市議会・本会議場]3か月後。私は高山市議会の本会議場に立っていた。高校生との意見交換会などは今までも議会で行われてきたけど、たった1人で公聴会に呼ばれるというのは異例中の異例だ。どうしてこんなことになったのか。地元のFM放送局でゲスト出演したら、TVや新聞、雑誌など、さまざまなメディアが私たちの活動を取り上げた。ローカルメディアのニュースから、全国のマスメディアへ。さらにネットニュースとSNSで全世界へ拡散されていった。”市やNPOなど、いろいろな団体が支援活動をしているにもかかわらず高校生の活動だけが注目されている”この事実を重くみた保守派の議員は、市議会に本人を呼んで、公聴会で事実関係を確認しようとした。なんだか大変なことになってない?ゲーム仲間たちはみんな私のことを心配して、オンラインでの参加をすすめる。私の大切な友だち、ピリカも、「私たちを助けてくれたエイミが晒されるのなんて見たくない」と言ってくれた。でも、今回提出された議案に答えるのにリモートでは説明しきれない。それにもう去年までの私とは違うんだ。そんな思いもあった。「私たちはただ、私たちができる方法でお役に立ちたかっただけです」「こんな風に、みんなの前で偉そうに自慢なんてしたくありません」「だって、こうしている今も、命の危険にさらされている人がいるんです」「その中には、私たちの友だちもいます。だから」「物資がなくて困っている人がいて、物資を届けたくてもどうすればいいかわからない人がいる」「そんな人たちへ一元化してお届けできる仕組みを考えていきたいんです」「トレーサビリティを管理するアプリを作りたい」「私たちがしたことは、そのための小さな第一歩だと思っています」あ・・・いつの間にか、結果の報告ではなく、ただの願望になってしまった。うわあ、炎上したらどうしよう・・・私の「発言」は、TV中継され、ネットで配信され、...
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    14 mins
  • ボイスドラマ「エール前編〜能登半島地震を忘れるな!」
    Feb 9 2025
    (CV:桑木栄美里)【ストーリー】■シーン1(朝)/自宅の朝■SE/朝の小鳥〜ゲームを止める音「おつかれ〜」「やばっ!朝じゃん」「そろそろ落ちま〜す」「んじゃよいお年を〜」チャットでフレンドと互いに労をねぎらう。大晦日だというのにゲームで徹夜してしまった。ま、いいや。寝正月寝正月。オンラインゲームのいいところは、感動や喜びをフレンドと共有できること。リアルで友だちのいない私は、ゲームの世界だけが交流の場になっている。まあ、その分こうやってだらだら会話しながら遊んじゃうんだけど・・・ゲームのフレンドは、リア友と違って気をつかわなくていいし、遠く離れていても同じ世界でリアルタイムに遊べるのが好き。私は年末から、海辺の町に住んでいるプレイヤーと仲良くなった。キャラ名はピリカ。ちなみに私はエイミ。2人とも高校2年生。ピリカは学校にはあんまり行ってないみたい。高山には海がないから、チャットで話してくれた漁師町の話、おもしろかった〜。私、勉強きらいだから学校行っても、休み時間はずっと寝てる。起きてるときも、ぼ〜っとしてるし。以前、生徒会役員にならないかって誘われたけど、冗談じゃない。相手を間違えてるんじゃないかしら。ひとと関わることって好きじゃないんだ。これからの人生、ずっと1人で楽しく生きていくからいいの・・・■シーン2/TVのニュース■SE/アナウンサーが画面から呼びかける(※宮ノ下編成部長)「高台や高いビルの上にただちに避難してください」「できるだけ海岸から遠いところへ逃げてください」元日の午後。緊急地震速報に続いてやってきた激しい揺れ。そのあと、信じられないようなニュースが、私の眠気を吹っ飛ばした。画面に映し出される、目を背けたくなるような惨状・・・何が起こってるのか、しばらくはまったくわからなかった。これは仮想空間の話?いや、違う。やがて、現実を理解した私はただ呆然とする。え?ちょっと待って。この場所・・・ピリカが住んでいる漁師町じゃない!?やだやだ。そんな、嘘でしょ。私は慌ててスマホを探す。だめだ。ピリカの連絡先なんて知らないし。そうだ、ゲーム。オンラインゲームのチャットだ。ゲームのチャットボックスを開く。だがもちろん、この状況のなかで、そんなところにピリカがいるはずがない。私は焦り、うろたえる。ピリカ、お願い。無事でいて。私はじっとしていられず、家を飛び出した。■シーン3/古い町並(静かなイメージ)から学校へ静まり返った、お正月の高山。観光客の姿もまばらだ。きっとみんな、ニュースを見ているのだろう。あてもなく彷徨いながら、気がつくと学校へ向かっていた。校門が開いている。校舎の1階に灯りがついている。あそこは・・・たしか、生徒会役員室。私は躊躇なく、扉を開く。机を挟んで向き合っている生徒会長と副会長。同時に私の方へ振り返った。学校へ来ているのね。元日なのに。”どうしたの?”と、驚きながら私に尋ねる。「えっと・・・あの・・・地震で友だちが」生徒会長たちは私を招き入れ、話し合っていたことを教えてくれた。それは自分たち、高山の高校生がいまできること。そうか。そうよね。生徒会も被災地の高校生たちと交流があったんだ。「今すぐ連絡をとりたい」「できないなら、助けにいきたい」「それも難しいなら、救援物資を届けたい」「義援金も送りたい」我を忘れて矢継ぎ早に問いかける私。生徒会長は冷静にわかりやすく説明してくれた。いまは現地の状況をメディアやネットから収集している。安否の確認は、信頼できる現地の自治体が発表するSNSを確認してから。無闇にチャットや電話で連絡をとると回線が集中して、よけいにつながりにくくなる。救援物資の持ち込みは、緊急車両の通行や救援物資を運ぶ物流の妨げになる。救援物資はまとめないと、仕分けの手間で被災地の負担が増える。義援金もバラバラと送るのではなく、地域でまとめてから送る。確かにそうだ。私、動転して、大変な状況の友だちに、より迷惑をかけるところだった。じゃあ、これから私ができることは?...
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    15 mins
  • ボイスドラマ「千年の約束」
    Feb 9 2025
    飛騨国府に伝わる「宇津江村の大蛇伝説」にインスパイアされ、現代と過去が交錯する幻想的な愛の物語として紡ぎました。記憶を失った女性がたどり着いたのは、千年の時を超えた約束の地。その先に待つ運命とは――?本作は、ボイスドラマ化もされており、番組「Hit’s Me Up!」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなどの各種Podcastプラットフォームでお楽しみいただけます。ぜひ、音声ならではの情感あふれる世界も体験していただければ幸いです。(CV:桑木栄美里)【ストーリー】<『千年の約束』>■SE/JR国府駅前の雑踏私、さっきからなにをしているのだろう?ここはどこ?飛騨国府駅(ひだこくふえき)?どうやってこの無人駅まできたの?いまどこへ向かっているの?ちょっと待って。そもそも・・・私はだれ?記憶喪失ってやつかしら?駅舎のガラスに映るのは、ミルクティーベージュのショートヘアー。白いニットのセーター。ダークチェックのボトムス。バッグは大きめのキャンバストート。この人だれ?これが私?格好は観光客じゃないわね。足は自分の意思と関係なく国府の旧道を北へ歩いていく。すれ違う人もなく、だれかに尋ねることもできない。背後の山から微かに聞こえてくる鐘の音。お寺でもあるのかしら。まるで私になにか声をかけているように聞こえてくる。振り返ることなく、私はすすむ。コンビニエンスストアの手前を、私は左へ曲がった。まるで道を知っているように。ほどなく国道の喧騒が聞こえてくる。そうだ。私は信号機の前で立ち止まり、バッグの中身を探る。免許証はないけど、身分証明書が・・・あった。高山市図書館国府分館 学芸員?25歳?私、図書館で働いているの?ああ、だめ、なんにも思い出せない。信号が変わり、私はまた歩き出す。国道を越え、宮川の橋を渡りはじめて足が止まった。四十八滝橋?その名前、どこかで・・・橋を渡ると歩道の袂は彫像。あ・・・記憶にある。いや、朧げな記憶は、彫像というより、宝珠を持った龍。この彫像がトリガーとなって、もうひとつの思いが頭をよぎる。”会いにいかなきゃ”え?誰に?どうして?わからない。わからない。わからない。それでも、思いに確信があふれてくる。反対側の欄干から宮川へ流れ込む宇津江川が見える。そのせせらぎを見つめながら静かに目を閉じると・・・そうだ。あれは・・・流れる水音。ブナの林から差し込む木漏れ日。あれは、いつのことだったんだろう?ああ、そんなことより・・・行かなくちゃ。あの人に会いに行かなくちゃ。あの人・・・だれ?わからない。とにかく進もう。県道を山へ向かって歩く。ひたすら一本道の直線道路。真っ白に雪化粧した田園。美しい日本建築の家。こんなに歩いているのに、疲れなど微塵も感じない。どのくらい歩いただろう。道はだんだん細くなり、いよいよ建物もなくなってくる。山の中をひたすら歩いていると、小さな休憩所が見えてきた。この先、車はもう入れない。彼方から水の音が聞こえてくる。ここは・・・宇津江四十八滝?滝?頭の中のもやが少しずつ晴れてくる・・・あれは、そう・・・遠い遠い、昔の記憶だった。■SE/水の音(滝のイメージ)雪が降り始めても、凍らない瀑布(ばくふ)。はじける雫が、私の体をさらに清めていく。滝面での行水は冬が到来する前の楽しみのひとつ。私は、ここ宇津江川の大蛇(おろち)。行水で鱗にまとわりついた穢れ(けがれ)を落としている。ふふ。さっきからイチイの樹の影で私を見ている若者。驚きのあまり、歯の根も合わぬほど震えておるな。まあ、無理もない。宇津江川の主(ぬし)の姿を見た者は、7日以内にその命が尽きる。今まで例外は一度もないからな。私の姿を見られるのもこれが最後じゃ。存分にその目に焼き付けるがいい。うん?なんだ?若者は滝を前にして正座した。命乞いか?少しくらいは聞いてやってもよいぞ。なに?命乞いではなく、彼は感謝の言葉を奏上して、山をあとにした。■SE/山歩きの音〜引き戸を開ける音若者は、茅葺(かやぶき)の小さな小屋へ入っていく。私はなぜかこの若者...
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    16 mins
  • ボイスドラマ「幻の粉雪〜メトロポリスTAKAYAMA」
    Feb 8 2025
    2050年の未来を舞台にしたフィクションですが、決して荒唐無稽な話ではありません。地球温暖化の影響が顕著になり、雪が消えた高山(TAKAYAMA)で、かつての冬を取り戻そうとする人々の姿を描いています。SFでありながら、どこかリアルな未来が感じられるように執筆しました。また、この作品はボイスドラマ化 もされており、音声と共に物語の世界を楽しんでいただけます!番組「Hit’s Me Up!」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでお聴きいただけますので、ぜひチェックしてみてください。音で感じる未来の高山、きっと新しい体験になるはずです。それでは、2050年のメトロポリスTAKAYAMAへ、一緒に旅をしましょう(CV:桑木栄美里)【ストーリー】■SE/吹雪の音「がんばって!もう少しで頂上よ!」「雪で前が見えない!」「なに言ってんの!やっとここまでたどり着いたのに!」「わかった!がんばってみる!」「ほら、晴れ間が見えてきたわ」「わあ・・・」「どう、これが霧氷よ」「すごい・・・キレイだ」「霧氷も樹氷も、氷点下の芸術ね」「はあ〜」ため息が出るほどの美しさ。言葉を失うほどの絶景を十分堪能してから、私たちはサングラスのトリガースイッチを押した。とたんに、目の前の風景は、吹雪から青空に変わり、ダウンジャケットを着ていると汗ばんでくる。私たちが装着していたウェラブルデバイスは、AR+VR=MR対応のモデル。2050年の今では、クラシカルな装備としてマニアに人気のグッズだ。サングラスで視覚を、マスクで臭覚、ジャケットで体感温度と風圧を感じることができる。「これが現実か・・・」「そうよ。雪化粧しない飛騨の冬山」ここは、メトロポリスTAKAYAMAの猪臥山(いぶしやま)。かつて『卯の花街道』と呼ばれる県道が走り、人気の冬山登山ルートだった。今や卯の花は春を待たずに開花する。いま、主要な交通機関は車よりエアカー。人を乗せるドローンだ。思えば2050年ともなると、TAKAYAMAも変わった。かつてJRと呼ばれた鉄道網には線路の下に光回線が張り巡らされている。北陸と名古屋を結ぶ高山本線は結局電化されなかったが、水素をメインエネルギーにする電道客車が無人で走る。駅舎も地下になった。かつての高山駅前は広場となり、子どもたちが遊んでいる。「この子たちは雪を知らないんだな・・・」「うん。スノーレスチャイルド」「SLCか。悲しい話だ・・・」彼は、メガロポリス『J』=かつて日本と呼ばれた国の、環境保全機関JWFで働くアナリスト。(※注釈:JWF=Japan Wildlife Fund/造語 by D)私はそのJWFの環境アドバイザーだ。2050年現在、地球温暖化は危険領域に突入し、夏の気温は47度を超える。国同士のくだらない争いに割いている時間など、とうになくなっていた。愚にもつかない紛争よりも、人類絶滅を防ぐ課題が最優先だ。国という概念は消えて、コスモポリスという枠の中にかつての”国たち”が所属する。そのなかにメガロポリス『J』というカテゴリーがあり、その中心がメトロポリス。古い言葉で言うと『首都』?そんな感じ。『J』の首都は、TOKYOではなく、TAKAYAMAだ。理由は明確。日本、つまり『J』の中心に位置するから。地球温暖化による海面上昇で、どこのメガロポリスも国土が消失しかけている。太平洋プレートとフィリピン海プレートに挟まれた『J』は隆起していっているのでまだ大丈夫だが。メガロポリス『A』のニューヨークなど、あと35年で水没すると予想されている。そういえば、私が生まれる前、日本沈没というアニメがあったなあ。(※注釈:Netflixアニメ映画『日本沈没2020』監督:湯浅政明)説明がだらだらと長くなってしまったが、言いたいことを簡潔に話そう。私がJWFから相談されたのは、『TAKAYAMAに雪を降らせる計画』。かつて雪国だったTAKAYAMAの住民の半数以上が、雪を知らないのだ。なんとか、粉雪を復活させようと私毎週この山に登ってプランニングしている。30年前の温暖化対策。かつてここが日本と呼ばれたころ、国家機関はいろいろ考えたらしい。カーボンニュートラル、プラスチックフリー、RE100・・・(※注釈:『...
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    11 mins
  • ボイスドラマ「高山ウォーズ」
    Feb 8 2025
    (CV:桑木栄美里)「ご乗車ありがとうございました。まもなく高山、高山です」テンションあがるなあ。3年ぶりの高山は。っていうか、3年ぶりの帰省か・・・ママの顔見るのも大学の卒業式以来。昨日いきなり帰るって電話したときは、なんか、急に ママ黙っちゃったけど。ウルっとしたのかなあ、それとも私が帰るとまずいことでも・・・いやいやいや、それはない。にしても、HC85系の特急ひだは静かだなあ、揺れないし。3年離れているうちに、世の中って変わるもんだわ。あ、私の名前はエミリ。職業は国家公務員。ママはフツーの国家公務員だと思っている。でも、私が所属するのは、内閣サイバーセキュリティセンター=NISC。以前ニュースにもなったからみんな知ってるでしょ。知らない?で、私の仕事はホワイトハッカー。国家機密や企業のコンピュータに不正侵入するブラックハッカーと日夜戦っている。みんな知らないけど、そもそもハッカーという言葉には悪意なんてないんだよ。本来の意味はコンピューターやインターネットについて高度な知識と技術を持っている人。悪いハッカーはクラッカー=ブラックハッカーと呼ばれるんだ。エミリったら、3年ぶりに電話くれたと思ったら、明日帰る、ですって。まったく。まあ、今年もあと3日だからいいんだけど。それにしてもまた、タイミングの悪いときに・・・私への脅迫メールが届いたのはクリスマスイブ。送信元は、外国人のテロリスト集団。結婚前に戸籍も変えて、高山でひっそりと暮らしていたのにどうして気づかれたのかしら?おっと、自己紹介が遅れたわね。私はエミリの母です。年齢?・・・ちょっと、それ失礼でしょ。ノーコメント。職業は社会福祉士。高山の社会福祉協議会で働いています。私、結婚前に中東で仕事していたことがあって・・・まあ、はっきり言うと傭兵なんだけど。いろんな国の兵士として、いろんな国の戦場で戦ったわ。たぶんみなさんよく知っている、あの国や、この国へも。女性の傭兵としては、かなり危ない橋も渡ってきたと思う。成果はいっぱいあげたけど名前は知られたくないから、”イリメ”というコードネームで戦ってきた。だけど、お腹に子どもができてから、完璧に足を洗った。東京を脱出してひっそりと高山で居(きょ)を構えた。私に子どもが産まれたことは、私を雇った国や組織も知らないはず。私が高山に住んでいることも。もちろん周りの人間はだれも、私の裏の顔を知らない。なのに、どうして今さら?いや、いまの世界情勢を考えるとわからないでもないか。彼らの目的は明確だ。テロというのは当事者よりも、傭兵のような外部に実行させた方がよい。あとからなんとでも言えるからな。メールには、「仕事のオファーだ。断る選択肢はない」と書かれていた。外資系企業のドメインだったけど、そんなの私にわからないはずがないでしょ。知る人ぞ知るテロリスト集団のダミー会社だ。私1人ならなんとでも対処できたけど、まさかこのタイミングでエミリが帰省するなんて。「ちょっとママ、どうしたの?タクシーなんてもったいない。私、久しぶりだから高山の街、歩きたかったのに」ママは私の質問に答えずに、運転手さんと何やら話している。”最近きつねを見かけたか”とか”古い町並に迷路ができた”とか。うーん。なんか引っかかる。いつもならすぐにパソコン開いてハッキングのチェックとかするんだけど。実は私、急に帰ってきたのは、ちょっとだけ仕事に疲れちゃったんだよねー。毎日暗号やらウィルスやらとにらめっこで、ストレス満載なんだもん。高山帰ったときくらい、ゆっくりぼ〜っとしたいわ。タクシーが家に着いたとき、母は運転手になにかを渡していた。”チップ”だと言ってたけど、紙のチップってなによ。玄関の真ん前に横付けしたタクシーから玄関へ。母の死角になって、町並もなんも見えなかったじゃん。私が家に入ると、母はタクシーに忘れ物をしたと行って外へ。おいおいおい。あわただしいなあ。■SE/タクシーのドアを閉める音駅前からタクシーに乗る。エミリはもったいない、と言...
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    15 mins